飼い猫・くろの奔放
実家に住む猫・くろは、全然飼い猫らしくない。
身体を触られるのを嫌がるし、呼んでにゃ~んと甘えることもない。
人間から見ると、ものすごいマイペースなのだが、飼っている人間としては、少々面白味に欠けるのである。
小さいころ、妹夫婦の家で、先住民・にゃん太郎に追われた経験が関係しているのかも知れない。
しかし、わたしが実家にお世話になって2ヶ月足らずのいま、そのくろが、わたしのあぐらをかいた膝に、ぴょーんと乗ってくるようになった。
それで、わたしの足の間でまるくなって寝ている。
かわいい…。
これでこそ、家猫ってもんだろう。
先日は、コタツで立て膝をしたわたしの横に、ぴょーんと乗っかって、ちょうどハンモック状態になったのが猫には嬉しかったらしく、1人でいつまでも尻尾をぱたぱたさせていた。
彼女の重みを腕で支えていたわたしは、珍しいくろの愛らしさのために、コタツ布団をふんばって支えていたのだ――約1時間くらいも。
そして、夕暮れどきの暗がりのなか、母が夕食の時間を告げに来たとき、ようやくわたしは座位不動のお地蔵さん状態から解放されたのである。
猫はそのとき、のんきな寝ぼけ眼をわたしに向けた。
動物には、心を癒される。
わたしはまもなく、自宅マンションに帰るつもりをしているが、せっかくくろがここまでなついてくれたのに、残念な気もする。
でも、こんなふうにあれこれ思考をめぐらせる1人間に、くろが寂寥感を覚えたりしないのは、明らかなのだった。
いまのわたしの膝の上や横は、彼女にとっては単なる「温度がちょうどよくて、寝心地がいいところ」であって、それ以上でもそれ以下でもない。
コタツが不必要な季節になったら、今度は涼しさを求めて、自分のテリトリー内のどこかにおさまって、涼しい顔をしているに違いないのだ。
だから、わたしも去るときは、速やかに去る。
くろのような《自由人》と付き合うには、ほどよい距離感が必要なのだ。
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