退院が決まる。

急な話だが、退院することになった。
いや、することにしたというべきか。
きっかけは、わたしとキャプテンがいつも一緒にいるので、それに文句を言ったある患者がいたことだった。
あいつだなとだいたい見当はついているが、証拠がない。
わたしは、急に夜が怖くなった。
まえから夜…施錠後の7時以降が怖いと思うことがあったが、今回もまた出てしまった。
看護師は、二人でべたべたしていたわけでもないし、その件についての問題はありませんと言ったが、わたしはとてもやりにくくなった。
誰かほかにも、同じように思っている人がいるのかも知れない。そんなふうに考えてしまうのだ。
担当医に話すと、退院、いいですよ〜ということだったので、わたしは今週の土曜日にそれを決めた。
それまでの夜も怖いので、3日のあいだ、実家に外泊することにする。
そんで、いまパソコンの前にいるというわけである。
4ヶ月間もよくちまちまとケータイでブログ更新していたなと思う。
わたしは、疲れが出たのか、昨夜はばたんと死ぬように寝てしまった。
病院というところは、居心地がいいところも悪いところも、表裏一体なのだ。
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ケータイ買った

いまいる精神科病棟で、携帯電話がなくなったらかなりのピンチだ。
患者同士アドレス交換してはいけないことになっているが、だいだいはまあやっている。
いまデイルームにいるから、なんて簡単な連絡や、人の悪口(笑)をいうのに欠かせない。
さて、それなのにわたしのケータイが、買って1年なのに2度目の故障をした。
不良品としか思えない。
具体的には、使用中に突然電源が切れる…、つまり充電の頻度の高すぎのようなご老体になるわけだが、そんなに酷使しているわけでもないし、ほんとに訳わからん!
わたしはこのケータイになにも期待しないことにした。
それで急いで昨日、新しい携帯電話を購入したのである。
まだ慣れていないので、これもどうなるかわからんが、一度文明の利器に触れたらもう、後戻りは出来ない。
そしてようやく、わたしは落ち着いた。
これで、突然電源が入らなくなって人との連絡が取れなくなったり、悪口や愚痴を誰かに話せなくなる恐れもなくなったわけだ。
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鉄の無神経女

昨夜は大変だった。
Eちゃんの目の前でリストカットし彼女をどん底に陥れた《電極》が帰ってきたのだ。
聞けば、他病棟に移ったのではなく単に外泊していたんだという。
さらに悪いことには、昨日の夜勤看護師が《電極》に言われるがままハサミを渡し、混乱するEちゃんにはなにもケアしなかった大ハズレ看護師だった。
看護師としてやる気あんのか?
ともかく、そういう訳でEちゃんはパニクってしまった。
無理もない。
わたしとEちゃんは同室なので、同じく同室のMちゃんと相談して、Eちゃん救出作戦に向かった。
といっても、これといって出来ることは殆んどないのだ。
患者同士の喧嘩はやった方の負け、夜勤看護師には決定権はない、当直医は注射などの応急処置しかとらない。
わたしたちはデイルームのソファに座り、《電極》をジョークのネタにして笑うしかなかった。
《電極》は、日焼けサロンにでも行ったのか、いまどき珍しいヤマンバになって帰ってきていた。
下手なリストカットしてのうのうと帰ってくるこの鉄の無神経には勝てん…。
消灯後、Eちゃんは点滴を受けることになって、わたしはしばらく一緒に待っていたが、眠剤が効いてきて眠ってしまった。
鉄の無神経を持った迷惑女が堂々とカッポしていて、被害を受けた弱った神経の女性が余計な治療を受けている現状って、どうなんだろう。

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凸凹コンビ

病棟にいると、ときどきへんな組み合わせの患者仲間を見ることがある。
わたしとキャプテン(30代♂)は、最近出来たお笑い二人コンビをひそかに笑っている。
犠牲者?はキャプテンと同室のYD(40代♂)さんだ。
YDさんは腰が悪いので、巡回の看護師に笑われながらもへんな格好で寝ている。
すなわち、布団を抱き枕にし、うつぶせ状態で花柄パンツのお尻を上に向けている…(らしい)。
そこへ乱入してくるのが、20代とおぼしきヤンキー姉さんである。
姉さんは、男子部屋であることをものともせず、廊下側に寝ているYDさんを見つけては「暇!←(決して《暇?》ではないらしい)」
と呼んで、無理矢理YDさんを毒ガス室(喫煙所)などに連行していくのだ。
YDさんも負けてはいない。
「うるせーんだよ!」と吐きながら姉さんについていく。
この凸凹コンビが面白くて、キャプテンがデイルームで見ていたら姉さんの方が、
「勘違いすんなよ!」と言ってきたらしい。
「いえあの…、MとSですか?」とキャプテンが言うと、姉さんもYDさんも大笑いした。
じつはわたしは人ごとながら、YDさんのことを気にしていたのである。
朝、6時半まで病棟の扉が施錠されているので、煙草組はソワソワしながら開門を待つことになるのだか、わたしが早朝覚醒で5時頃デイルームに行くと、YDさんはいつも一人ぽつんとソファに座っていたものだった。
それが、若いやんちゃな姉さんにつきまとわれて、うるせーなと言いながらもちょっぴり嬉しそうなのである。
わたしは、このコンビの行く末を見守りたいと思う。

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病棟の近況とか

まだ、退院できずにいる。
外科やなんかと違って、スパッと治る→退院という流れにならないのが難しいところだろうか。
「特定の患者と仲良くなってはならない」などという規則があるのも面白い。
確かに、人間関係のつくり方が下手な患者が多いので、患者同士のいさかいもしょっちゅうある。
先日、わたしたちグループが呼ぶところの《電極さん》(金髪にところどころに青と赤のエクステをつけている)が、真夜中に取り乱して、看護師にハサミをよこせとわめいたらしい。
ハサミやカミソリなんか、このメンタルケア病棟では誰だって持っているが、なぜか彼女はわざわざそのハサミでリストカット――あとで見たら彼女の厚い上腕の脂肪を切っただけみたいだった――をし、眠れなくてデイケア室にいたEちゃんに「怖い?」と見せたそうである。
Eちゃんには解離性障害があって、自分の記憶のないところでリストカットする症状があるので、《電極》のショックで、治りきっていない手首をまた切ってしまった。
《電極》め!
あいつ、別病棟だろーと仲間内で噂していたら、やっぱり昨日あたりから《電極》はいなくなった。
それはそれで、また見ものが減ってつまらない、もとい結構なことである。Eちゃんの心身の傷を考えると、しかるべき措置だろう。
わたしは最近、キャプテン(30代♂)とずっと一緒にいるが、キャプテンはそんな怖い症状をもたない単純鬱の人なので安心している。
MKちゃんは死にたい願望をしょっちゅう口にするので、ちょっと距離を置いている。
部屋人Mちゃんとは漫画友だちをやっている。
そんなところだ。

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生と死

4羽のうちでいちばん小さくてひ弱だった子ツバメ、二階患者に巣からはたき落とされて震えていた名もまだない子ツバメが、今朝死んだ。
早朝、病棟の扉が開いてすぐに、三階患者たちが墓をつくりに行った。
「あたまと尾っぽを上げて、最期までがんばったんやなーっていう感じの死に方でしたよ」
もっともよく看病していたグループにいた同室のEちゃんが言った。
わたしは朝食後、松の木の下にあるというその墓に行ってみた。
少しだけ手を合わせて、生前のかわいい姿を思い出した。
ここには自ら「死にたい」という患者がいっぱいいるけれど、死ぬときは簡単なものだ…。死にたい死にたいと繰り返す人は、じつは生きたい人なんじゃないのか。
そんなことをちょっと考えながらお墓と別れて、わたしは生の方へ歩を進めた。
庭にいるスズメどもが、わたしの残り物のパンを待っているのだ。
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子ツバメのショック

なんて、ひどいことをする人がいるんだろう。
わたしのいる病棟は、一階急性期閉鎖フロア、二階回復期リハフロア、三階療養フロア(わたしは3F)となっているのだが、今年嬉しいことに、病棟の入り口にツバメが巣をつくった。
病棟の、ほぼ全員…とくに状態のいい三階患者らは、毎日のようにこいつらを見上げ、親ツバメが餌を運んでくるのを、まさに目を細めて喜んでいたのだ。
ほんとうに、ツバメたちは皆のこころの癒しになっていた。
ところが一昨日、この巣をタオルで叩いて、一羽の子ツバメを落とした輩がいたのである。
ちょっと呆けている(語弊があるな)二階患者であった。
看護師さんたちが脚立を持ち出して巣に戻そうとしたが、これがまた落ちた。
三階住人YDさんによると、どうやら、いったん人間の匂いがついてしまうと駄目らしい…。
それで、YDさんがカゴだの餌だの、スーパーからいろいろ買ってきて、みんなで看護師さんに無理を言って、三階で世話をしているのである。
子ツバメは、大勢で見ていても、じーっと枝棒につかまったまま身を縮めている。
ショックで呆けている(語弊はない)んじゃないのかとわたしは思った。
鳥博士?のYDさんが、まあ棒につかまっているから大丈夫だよと言った。
こういうショッキングなことがあると、取り乱す患者さんもいるし、巣を叩くなんてもう、絶対やめてほしい。
二階のどいつがやったんだか知らないが、てめー病棟変わって保護室(施錠・トイレ・監視カメラ付き・一泊0円)でしばらく反省してこい!と思った人間はわたしだけではないはずだ。
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退院近し?

最近、病院の窓から外を眺めているだけの生活が辛くなってきた。
病気が良くなってきたんだと思う。
「電車・バスに乗ってでかけるのが、いまはむしろ楽しいです!」
「病院外の、いわゆる普通の人のなかにいる方が楽です!」
大阪はアメ村で買ったばかりの派手めのキャミソールを着たまま、わたしはいんちょー(←担当医)に熱弁した。
いんちょーはじーっとわたしの様子を見たあげく、「まあ、そんだけ調子よくなってるんなら、今週末家に外泊してもええんちゃう?」と言った。
しかし、突然様相が変わって幽霊になってきたのがわたしである。
いんちょーは週末外泊に最終的GOサインは出さず、決定は金曜日にということになった。
ほんとうにわたし、信用ないなあ。
最近は、同じく院内生活がしんどい〜というレベルの患者さん…キャプテン(30代♂)と行動していることが多い。
MKちゃんは残念ながら、病院周辺のスーパーにたまに行くのが精一杯なのだ。悪いなと思って看護師さんに相談したが、よくあることのようで、
「患者さんによって治り方も違うから、自分をしんどくしてまでレベルの違う患者さんと付き合う必要はないのよ!」と異口同音に言われた。
まあ、間違ったことはやっていないんだろう。
そんなわけで、退院も近づいている感のするこの頃である。
早くこの、毎食のプラスティック食器から解放されたいわ…。

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自分との対峙に負けて

昨夜のわたしは、最低だった。
夕方、緑の芝生に寝っ転がって青い空を見ていたら、急に《現在の自分》が戻ってきたのである。
《現在の自分》と《あるべき自分》との解離が、わたしのカウンセリングの最大テーマだった。
そして、そのあまりの辛さにわたしは、担当医と相談してカウンセリングをやめたのだ…。
でも、それをしても、やっぱり自分は戻ってくるのだった。週一回くらいのペースで。
わたしは、夕食前あたりから落ち込み始めた。
それでも夜、必ず集まる仲間のもとへ出向いたのだが、ぎゃはは笑いがどうしても辛くなって頓服を飲み、彼らにことわって廊下の一人歩きを開始した。辛くなったときの、わたしの癖である。
あたまを抱えながら歩いているうちに独り言が出てきて、やがてスリッパを放って裸足で歩き始めた。スリッパの中が熱くなったからである。
だがよりにもよって、その姿を仲間に見られてしまった。
彼らは、暗闇のなかで深刻な表情でテーブルに座っていた、無言で。
ほんとうなら、消灯後はさっさとベッドに入らなければならないのだが、事情があるときは看護師さんたちは大目にみてくれる。
それでわたしは、嫌いな自分語りを彼らにする羽目となった。
しんどい。辛い。これしかどうせ言葉は出てこないのに。
神妙な面持ちの相談相手なんて要らない、わたしは…、相談相手を必要とする自分こそが嫌なのだ。

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愛すべき3人の同室者

いまの同室者は性格・態度ともいい人ばかりで、お互い「アタリですねー」と言い合っている4人だ。
ちなみに平均年齢はいくつなの?とMちゃんに尋ねてみると、24・30・35・42であった。
む…計算するといくつになるんだ?
そのMちゃんと話していると、彼女の箪笥の上に『のだめカンタービレ』(漫画)を発見する。
「あっ、《のだめ》があるー」とわたしが言うと、Mちゃんは「全巻ありますよ」と快く貸してくれた。
う…ありがとう!これ読みたかったの〜。
Mちゃんはほかにも、高級クッキーやジュースを部屋のみんなにくれた。
べつの病院でカウンセリングを受けた帰りに買ってくれたのだが、なにより気持ちが嬉しい〜。
すると連鎖的?に、Gちゃんもスーパーで買ったというかわいいみかんを配ってくれる。わーい。
いまだかつて、こういうほんわかムードが、精神科入院であっただろうか?わたしは、ない。精神科はあんまりこういう普通のことをしないんだと思っていた。
実際、いまはたまたまアタリなんだと思う。
もう一人、Eちゃんは解離性障害その他いろいろ持っていて、いつも貧血などでフラフラしているが、とても面倒見がよく、この病院が初めてのMちゃんになにかと教えてあげたり、いま病棟で唯一の10代女子に「自分がいちばん歳が近いから」と話し相手になってあげたりしている。
うわ〜なんていい人なの?
他人を思いやる…わたしになかったのはこれだったのね!
…なのだが、いまのところ、わたしはこれら3人の愛すべき同室者たちになにもしてあげていない。
たぶん無理?なんて思っている。
わたしに出来ることは、なんかあったときに、逐一声をかけたり、困ったときの話し相手になったりすることくらいじゃないだろうか。
モノくれたからって、いきなりオウム返し(←注:用法ヘン)するってのも変だしさ。
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