6000年の孤独 - LIFE,LOVE&PAIN

LIFE,LOVE&PAIN

タイトルは Club Nouveau の80`sのアルバム名。人生っていろいろあるよね。
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6000年の孤独

denkyu

恋人Sちゃんは、わたしがチャットルームに初めて入ってから、わずか数日で夜のスカイプに誘ってきた。
スカイプ仲間が、「なんでそんな期間しか知らない子を連れてきたの?」と聞いたほどである。

Sちゃんは言った、「いやぁ、この子、面白いんだよ。例えば、あちこちに連れ出してみて、いちいちその反応を見たい感じ」。
それはわたしにとって、恋の告白と同じだった。
なぜなら、まーったく同じセリフが、田辺聖子の小説に出てくるからである。

それはともかく、わたしはチャットルームでほとんど発言していないのに、どこを見て面白いと感じたんだろうか。
よくわからないが、ただわたしは、スナックでバイトしていたときも、あちこちの客から「宇宙人」と呼ばれて、ママもそれを笑っていて、どうやらわたしはほかの女性スタッフと違うらしいと思ったことはある。

昨日、チャットルームでSちゃんと二人になったとき、わたしは言った。
「わたしは、前の部屋は、KUさん(河内のヤンキーばばあ)かSちゃんのどちらかがいなくなったら成り立たない部屋だって、数日間ろむっててわかってたよ」
前の部屋とは、KUさんを、男連中が持ち上げて、くだらんオヤジギャグばかり飛ばしていた部屋だ。
KUさんはともかく、なぜそう目立たないSちゃんが部屋にとって必要だったかというと、よく見ると、Sちゃんは男連中を束ねている陰のガキ大将だったからだ。
あとのは雑魚。ガキ大将がいないと、どぎついキャラのKUさんを簡単にいじれない。

「そうかな」とSちゃんは言った。
「でも、わたしの目は正しかったでしょ?」

前の部屋はSちゃんがいなくなってから、誰も来なくなって、いまは閑散としている。
持ち上げられていた河内のヤンキーばばあはときどきいるが、周りは女ばっかで、前みたいに男に持ち上げられて女王さま気取りで、それを邪魔する女を排他したり子分にしたりなんてことは、できていないだろう。

「なんか視点が違うのかな」とぽそっとSちゃんが言った。
「わたしのこと?」
「始めに共感があって、共鳴するんだよ。ああ、そんな見方があるのか、そんな考え方があるのか。それで共鳴していく」

Sちゃんは、さすがにわたしのことを「宇宙人」とは言わなかった。
でも、たぶん長い間、凝り固まった人間関係のなかで、あんまり違うタイプの人間と出会ってなかったんだろうなと思った。

夜のスカイプでも、わたしはSちゃんのことを言い当ててしまった。
「チャットをしている人は、みんな孤独で暇な人。Sちゃんがチャットを始めたのは96年だから、その頃からなんかあったんだよ」
するとSちゃんは、「そうかも知れないな」と笑った。
そして、「20年くらいかな・・・、ずっと何かが足りなくてね。ゆみの笑顔がそれを満たしてくれる」と言った。
それもわたしには予想済みで、この人はかなり長い間孤独で、ずっと何かを探している人だと思っていた。
萩尾望都の漫画で、6000年? を孤独に生きてきた男が、ある少女と出会い、「きみを探してた。きみに間違いない」と言うシーンがある。
初めて会ってまもなくの頃から、わたしはSちゃんを考えるたび、このシーンを思い浮かべていた。
たぶんいまのSちゃんは、この男だと思うよ。
でも、わたしに6000年? の年月を埋めるだけの力があるのかどうかは、わからん。

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